【赤本】化学入試過去問使い方

【赤本】化学入試過去問使い方

化学における、入試過去問のおすすめの使い方を解説します。

教科ごとにおすすめの使い方は異なります。(数学・物理・化学には共通する部分が多いです。)

細かく言えば大学ごとにも異なりますが、まずは化学入試の教科的な特徴からお話しします。

 

【英文解釈】赤本(過去問)の復習法

大前提として(入試の構造)

赤本で演習する際の大前提として、「基本問題や基本知識に抜けがないこと」があげられます。

これは、教科によらず言えることです。

その理由は問題の構造にあります。

 

 

入試問題の主な特徴は

基本問題集などと違い、「誘導問題が少ない」という点にあります。

 

入試全般について説明します。

基本問題集などのテキストの場合大問1つに小問がいくつかで構成されていて

大問1→(1)→(2)(3)

大問2→(1)→(2)(3)

大問3→(1)→(2)(3)

・・・・

となっています。(1)や(2)(3)に対する誘導であることがほとんど。

 

基本問題集
この問題で言えば、問2の(2)より前の問題は最後の問題に対する誘導になる

それに対し入試問題の構成は、(例外はありますが)大まかに以下のようになっています。

入試の大問1つに→(1)基本問題集の大問1の(3)

(2)基本問題集の大問2の(3)

(3)基本問題集の大問3の(3)

・・・

例えば入試問題の一例ですが

この問題に対し・・・
いきなり問4のように最終的な計算結果を問われる。それぞれ問1~問4は、基本問題集の最後の大問1つの最後の問題にあたるものがほとんどとなる。結果として問1~問4が独立している問題のように見える。

となっています。

基本問題集で(1)→(2)(3)と誘導されていたものが、

いきなり(3)を問われる、ということ。

そのため、副作用として入試の大問一つには、

たくさんの基本問題の(3)にあたる問題が詰め込まれています。

完答に必要となる基本問題の知識が、入試問題では大問1つに数個(基本問題4~8個程度)になります。

 

基本問題における(1)や(2)をふくむ、最終的な(3)に至るまでの流れを事前に身につけておかないと解けません。

そのため、基本問題集で

・基本問題ごとの解法パターンや、流れを知っておく

※(1)までとか(2)まで解ける、とか(1)や(2)があれば(3)は解けるじゃダメ。

 

なぜその流れで解いていくのか理解しておく

※なぜ(1)や(2)のような誘導をするのかを理解する、(1)や(2)がなかったらどうやって自分で考えだせばよいのか本質的に理解することが大事。

誘導問題がないと解けない状態では太刀打ちできません。

もちろん、基本問題自体にもれがある状態では解けません。

 

赤本は目的が大事

まずはその目的です。

赤本に載っている問題そのものは、今後出題されることはありません。

過去問そのものではなく、過去問に潜む傾向をとらえることが大事です。

傾向をとらえ、その後の勉強に生かすことに価値があります。

①各大学ごとに同じ分野の問題でも、空所補充で出題したり、記述形式で出題したりのパターンの違いがあります。過去問はそれを把握できます。さらに大問ごとにどの分野からの出題が多いかパターンがあります。→自分でどれくらい、どの分野を説明できるように勉強すればよいのかわかります。

 

②どのくらいヒントになるような情報を問題文に与える傾向があるのかも違いがあります。

つまり誘導が細かいのか、あまりないのかの違いです。

過去問はそれを把握できます。→基本問題を解くときに、どう考えて勉強すればよいのかわかります。

 

③レアな知識を必要とする問題がどのくらいあるのかの傾向に、大学ごとの特徴があります。

過去問はそれを把握できます。→レア知識がちょっとしかなければそれは重視しない。レア知識がよく出題されるならチャートなど、より詳しい参考書の勉強が必要になる。

 

④計算問題の難易度や問題量に大学ごとの特徴があります。

過去問ではそれを把握できます。→計算問題をどのくらい速く解く必要があるのかがわかるので、目指すべき計算スピードの目安になります。

 

以上のように、赤本を解くことで自分の勉強に生かすことが大事。

そのためにも、赤本自体の得点率より「なぜ解けなかったのか」が大事。

つまり分析ですね。

 

・基本問題集にはその解法があったが、誘導がないと解けない状態であった

・基本問題集と同じような問題であったが、本質的に同じ問題であることが見抜けなかった

・基本問題集とは異なる物質が使われている問題で、知らない問題だと錯覚した

・基本問題そのものが理解できていないかった

・基本問題以前の基本事項の理解が本質的にできていなかった

・基本問題集にない解法や知識が使われていた(ほとんどない、あっても難問で意識しなくていいことが多い)

・・・

など「なぜ解けなかったのか」をもれなく丁寧に分析して、自分の勉強にフィードバックするとよいです。

もちろん「基本問題集」や「講義型参考書」の復習が大事ということです。

 

傾向を知るためには、赤本は解く順序が大事

赤本は〇年分解くとよい。

よく言われます。

私も赤本は10年分くらいやるとよいと思っています。

ただそれは、自分の基本知識が完成した後の残り時間やほかの教科の対策時間とのバランスが大事。

一概に「〇年分がベスト」とは言えません。

 

それよりもっと大事なのは解く順序です。

※以下の内容は、大学ごとの違いがあります

大学ごとに大問構成は毎年似通ったものになります。

例えば長崎大学(理系)の化学では

第1問:物質の成分と元素~化学結合と結晶の出題。電子配置やイオン化エネルギーなど原理的な理解を問う問題が見られる。

第2問:気体~反応速度と化学平衡の出題。典型計算問題と空所補充や知識問題が挟まれたりする。計算自体は複雑ではないが、問題文より後の誘導が少ない傾向にあり、問題文から「何が起こってどのような量的変化が起きたのか」自分で考え結果を導く力が問われている。

第3問・・・・

のように大まかに決まっています。

他の大学についても傾向があります。

その傾向をより分析できるように、

仮に10年分赤本を解こうと思ったら、10年分の大問1をまず解きます。

(※これは毎年長崎大学の大問1が、毎年似たような傾向だからです。)

2020年度の入試全問→2019年度の入試全問という、

一般的な解き方(垂直に解く、と表現することにします)ではなく

 

2020の第1問→2019の第1問→2018の第1問・・・というように水平に解きます!

全部終わったら2020の第2問→2019の第2問→2018の第2問・・・と別の大問を進めます。

似た傾向の大問1つを複数年分解くことで、

〇〇の出題分野では〇〇の力が問われている

ということがわかります。

 

水平に解いて、傾向分析

同じ理論分野から出題される入試問題でも大学によって問題の作成意図は様々です。

 

・用語や現象の本質的な理解を試す(「~の理由を説明せよ」のような問題がでる)

・典型問題の処理速度を試す(誘導は比較的多く、問題数が多かったり、計算がややこしかったりする)

・あまり典型ではない、化学反応や化学物質について知識を問う(聞いたことない、一部の人が知っているような物質名や反応が出題される)

・あまり典型ではない化学反応や化学物質を使って、未知のものに対する思考力を問う(聞いたことない反応について出題されるが、内容的には典型問題と同じ考え方で解ける)

など問題の作り方は様々。それらがある割合でミックスされていたりもします。

 

実は大学ごとに、そして大問ごとにどのような力を試す問題かという本質的な部分はあまり変わりません。

これは、大問ごとに問う要素が決まっているということ。

 

入試の年度ごとの差はもちろんありますが、

複数年度の同じ大問を一気に解くことで、複数年度の同じような作成意図の問題を比較できるので

抽象的に大問の作成意図が理解できます。

そしてこれは、実際に自分が受ける入試でも似たものになる可能性がとても高いです。

 

3年から5年分の入試過去問でも傾向はつかめると思いますが、

水平に解くことが傾向分析には本当におすすめ。

連続して解くと、なんか問題の作りが似てるな、と感じると思います。

 

赤本の使い方まとめ

・赤本は問題傾向と、自分の勉強法の分析に使う(敵を知る、己を知る)

・赤本は水平に解いて、大問ごとの問題作成意図を分析する(より深く、効率的に分析する)

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