突然ですが、以下の下線部のことばの意味を説明できますか?
(なるべく自分の言葉で)
1、客観的事実
2、普遍的法則
3、価値観の相対化
4、アンビバレントな感情をいだく
5、原発の安全神話
6、言語の恣意性
解答例を最後に書いておきます。
ちなみに、医歯薬など難関大志望者は、すべて説明できるという状態が好ましいです。
全部あるいはほとんど全部、正しく説明できたという方、大変すばらしいです。
「こんなの全然わからない!これだから現代文は嫌いだ。」と思った方、どうか安心してください。
以下の記事で、、語彙力の向上させる方法について解説します。
【語彙力はなぜ必要なのか?】
すこしだけ回り道をしますが、そもそも語彙力がどうして受験に必要なのでしょうか?
1、単語が分かれば、読みやすい。
当たり前ですが、本文中の重要な言葉が理解できないと、本文全体で何を言っているのかがわからず、得点できません。
2、頻出テーマについて知っておくことができる
受験で出題される文章には、出やすい分野(頻出テーマ)があります。
それらを一通り知っておくと、「あ!この話か!」となり、文章が読みやすくなります。
3、英語の長文/小論文対策にもなる
英語の長文にも、ある程度一般教養がないと読みにくいものがあります。
(日本語訳を見ても、「結局何を言いたいのか、よくわからない」と思ったことはないでしょうか?)
小論文でも同じことが言えるのですが、いわゆる「医学部受験の英語」ではなく、一般常識的な部分や文系の学問のことが問われることもよくあり、ある程度知っておくことが望ましいです。
また、英文和訳では、単なる直訳ではなく「内容レベル」での和訳が必要となります。
解答をまとめる際に、抽象的な語彙をきちんと使えると、よりポイントを押さえた解答が書けるようになります。
4、選択肢が選びやすくなる
選択肢は、正解ほど言い換えられていることが多いです。(本文と同じ言葉を使ってしまうと、皆が選べてしまうため)
語彙力があると、言い換えの選択肢に対応しやすくなります。
5、思考力を底上げできる
人間は、言語を用いて思考する動物なので、抽象的な語彙を身につけると、より抽象的な思考ができるようになります。
小手先の受験テクニックではなく、「思考の抽象性を高める」ことは、どの教科においても、難関大受験には必須です。
【よくある勘違い】
よくある勘違いを2つ挙げます。
1、語彙力は、今までの環境によって決定される。
勉強しても無駄だ。
国語は生まれ育った環境である程度決まっているのだから、もともとできる子はできるし、素質がない子は勉強しても無駄だ、という意見を聞くことがあります。
たしかに、国語の勉強をしているようには見えないのに、国語の成績が良い生徒は存在します。
また、生まれ育った環境でどれくらい抽象的な語彙が使用されていたか?という成育歴は、たしかに現在の語彙力のファクターとなります。
しかしこれは、「センスのない生徒は勉強しても無駄だ」ということには直結しません。今後、きちんとしたやり方をすれば、語彙力の底上げは可能です。
今まで、正しいやり方で学習した結果語彙力が向上し、それによって思考力が向上した生徒さんを数多く見てきているからです。
また、勉強しても成績が伸びず、「センス」や「成育歴」によって受験の合否に差がつくというというのは「公平」ではないからです。
これでは、入試科目として成立しません。
2、読書をしないと語彙力は伸びない
学校の先生などから、次のように言われたことはないでしょうか?
「語彙力を鍛えるためには、とにかく本を読むしかない。本をたくさん読みなさい」 また、自分には読書習慣がないから、本を読む時間がないから、とあきらめている生徒もいます。
たしかに、読書経験は語彙力と関連はあります。
本を普段から読んでいるのと読んでいないのとでは、前者の方が有利なのでいうまでもありません。
しかし、読書だけが語彙力を伸ばす手段だけではありませんし、時間がない受験生に「いいから本を読め」というのはコストパフォーマンスがよくありません。
このように言われていた(言われている)理由は、ただ単に、
・(そのように言う先生が)きちんとしたノウハウを知っていない
・昔は、語彙力を向上させるよい参考書がなかった
からです。
今は、良い参考書がたくさんあるので、きちんとしたやり方さえ守れば、語彙力そのものを鍛えていくことは十分可能です。
【参考書おすすめ】
「評論用語」「現代文の語彙」などの参考書はいくつかあるので、自分に合っているものを選んで構いません。
学校で使っているものがあり、その本に抵抗がなかったら、それをそのまま使ってもよいと思います。
1、『現代文 キーワード読解』Z会出版
この分野ではもっともよく使われており、生徒全員に配っている高校も多いです。
最大の売りは、言葉の意味だけではなく、その言葉が実際に使われている文章が載っていることです。 (受験で出題された文章の抜粋)
なので、文章の中で、その言葉の意味を把握していくことができます。
(『速読英単語』と同じ発想です)
もう一つの特徴は、言葉の説明だけではなく、その言葉とリンクした「頻出テーマ」が説明されていることです。科学・言語・近代など、項目に分かれており、受験生として知っておきたい一般教養について有機的に(=つながりをもって)理解することができます。
もし、ある程度国語力があり、この本を使って学習できそうならば、一番お勧めです。
2、『ことばはちからダ!現代文キーワード』河合出版
こちらの方が平易な文章で書かれているため、国語が苦手な生徒におすすめです。
こちらを終わらせてから、『現代文 キーワード読解』に取り掛かってもよいです。
【語彙力系参考書の使い方】
1、通読→全体像をつかむ
まずは最初から最後まで通読してください。
この後繰り返し読むことになるので、すぐに理解できる必要はありません。
最初に全体を通したほうが全体像がつかみやすくなるので、あまり構えずに、最初から最後まで読み通してください。
2①精読
次に、自分でペースを決めて、1章ずつ精読してください。
あまり長期的な計画を立てずに、短期で仕上げたほうがよいです。
練習問題もここで解きましょう。
2②疑問の解消
学校の先生や保護者など、大人をうまく使ってください。
2③アウトプット
どの教科でもそうなのですが、インプットだけ(読むだけ、解説を聞くだけ)では、十分な実力が付きません。
アウトプットが大事です。
具体的には、
A 自分の言葉で説明できるようにする。
B 自分で例文を作れる
は、必ずやってください。
これをするとしないのとでは、今後の学習の効果がかなり変わってきます。
ノートに書いてしまうと時間がかかってしまいますので、口頭で大丈夫です。
自分一人では正しいかどうかチェックできない場合、学校や塾・予備校の先生や、保護者に頼んでチェックしてもらいましょう。
ペースを決めるとモチベーションにもつながります。
3、通読を、2~3回繰り返す
知識のメンテナンスとして、また、より完璧なものにするため。
※1~4までを、長くても1か月以内に終わらせてしまいましょう。
ダラダラ・チマチマとやっていても、最初の方を忘れていってしまいます。
4、辞書的に使う
例)
模試や教科書の文章で、参考書中の言葉が出てきた
→どういう意味だったか確認しよう。
例文の作り方についての補足
【自分で例文を作る際のコツ】
・評論文に出てきそうな、かっこいいものでなくても構いません。身近なところで考えてOKです。
・抽象度が高く、自分でオリジナルの例文を作りにくいものは、『キーワード読解中』の中の例文を少しだけ変えたものでも構いません。
・辞書を引いてももちろんOK。(めんどくさがらずに辞書を引く習慣は、むしろ、難関大受験生には必要なものです) ネットで検索してみてもOKです。
以下、その理由です。
「自分で例文を作ってみる」ことの目的は、その語彙を「使用語彙」へと変えることで、より抽象的な思考ができるようになることにあります。
ここで、少しだけ語彙の種類の説明をさせてください。
語彙には2種類あります。
理解語彙:聞いたり読んだりした際に、理解できる語
使用語彙:話したり書いたりする際に、自ら使用できる語
普通の人は前者の方が多いのですが、語彙としての質は後者の方が高く、後者の使用語彙の量で、その人がどれくらい抽象的な思考ができるか?が決まります。
つまり、自分で例文を作ることの目的は、
評論用語を、使用語彙として使いこなす。
→それによって思考の抽象度を上げる底上げする
ことにあります。
なので、どうしても例文が作りにくいものは、無理に例文を作る必要はありません。
(「社会科学」という言葉を使って例文を作るのは、少し難しいですよね)
ただし、その語彙を使用して思考ができるようにすることを意識してください。
例1)
「自己目的化」の、(『キーワード読解』に載っているものとは別の)例は何があるだろうか?
→あ!そうだ!
例えば、ある人が、勉強の内容を整理するためにノートにまとめていたはずなのに、いつの間にか、ノートをきれいに取ること自体に集中し始めたとする。
これも、「自己目的化」の例と言える!
例2)宮崎駿のアニメ、『ナウシカ』って、「アニミズム」的な世界観だなー。
また、本文や語彙の説明に書かれている内容について、自分の頭で考えてみることもかなり効果的です。
例) 独我論って、正しいのかなー。たしかに言っていることは分かるけど、そんな考えはやっぱり自分には納得できない。でも、英語『マトリックス』みたいで、なんか刺激的な考え方だなー。
どうしても自分の例文に不安がある場合、学校や塾の先生や親御さんに見てもらうのもよいです。
もう1つ、おすすめの方法があります。
それは、会話で使ってみるという方法です。
すぐあとに、より簡単な言葉で言い換えるならば意外と自然に使えます。
例)「幸せって、結局相対的なものっていうか、他との関係で決まるものだよね……。」
親御さんや兄弟に対して、「評論用語の勉強をするのには、実際に使ってみるのが効果的って聞いたんだけど、今からたまに難しい言葉を使ってみるからね」などと、断っておいた上で、会話に難しい言葉を使ってみるのもお勧めです。
(あまりやりすぎると、「変な人」になってしまうので、気を付けてください)
今までは使いこなせなかった語彙を使えるようになることは、より抽象的な思考ができるようになるということです。抽象的な思考能力は、受験でも社会でも非常に大事です。
新しい世界が開けてきます。
(今までは名前を知らなかった雑草の名前を知ると、急にその雑草が目に付くことってありますよね?それと同じで、語彙力が増えると世界が広がります!)
私たち大人も含めて、現代日本人は、どうやら言葉を“四捨五入”して使ってしまう傾向があるようです。
もっと限定した、ふさわしい言葉があるはずなのに、意味の範囲が広い言葉を使ってしまいがちです。
(「やばい」「マジうける」のような)
できるだけ、「使用範囲の広い、四捨五入してしまう言葉」と使わず、「もっとふさわしい言葉があるのではないか?」と考えていく習慣をつけていくのもお勧めです。
まとめ
例文を作る目的は、その言葉を、理解語彙→使用語彙へと変えるためです。
なので、その目的を達成するためならば、細かいことは気にしなくてもOK。
辞書やネットで調べてもOK。
《最初の問いの解答例》
1、誰が見ても正しいこと。
2、いつでも、どこでも成り立つこと。
例)「人間はいずれ死ぬ」ということは、普遍的な事実だ。
3、他と比べて冷静に見ること。
例) 外国語を学ぶことで、自らの文化を相対化することができる。
4、同じ相手に対して、相反する感情を抱いている状態。
恋人のことを、愛していると同時に憎んでもいる。
親に対して尊敬と軽蔑の感情を同時にもっている etc。
5、根拠がないのにもかかわらず、多くの人が信じていること。
例)3.11によって、原発の安全神話が覆された。
6、言葉とその言葉の意味内容との間に必然性がないこと。
例、「リンゴ」という言葉と、リンゴという「物自体」には、必然的な結びつき(=必ずそう呼ばなければならない理由)はなく、リンゴをリンゴと呼ぶのは人間が勝手に決めたものに過ぎない。